2026.7.27
研究者のキャリアは、研究室の外へどう広がるのか——起業家2人と支援者が語る「専門を社会につなぐ」選択
REPORT
#研究×ビジネス

研究を続けるか、企業で働くか。研究者を志す学生の進路は、しばしば二者択一で語られます。しかし実際には、研究成果を自ら事業化する道も、研究と事業の間をつなぐ道もあります。
5月末、東京大学柏キャンパスには、進路を考える学生・若手研究者に加え、起業家、企業研究者、事業開発に携わる実務家が集まりました。柏の葉共創機構が開催したトークセッション「研究×ビジネスで拓く新たなキャリア」(企画・主催:三井不動産、Relic、東京大学大学院新領域創成科学研究科)のテーマは、起業を唯一の正解とせず、研究者が専門性を生かせるキャリアの幅を考えることです。
「今日は別に、起業が素晴らしいという話をするつもりはありません。研究を続けることも、就職することもある。様々な可能性がある中で、研究者としてのキャリアの可能性について先輩たちの話を聞いて、何らかのエッセンスを持ち帰ってほしい」
起業を勧めるのではなく、選択肢を増やすための材料を提供する——この姿勢が、セッション全体を貫いていました。登壇したのは、研究成果をもとに起業した2人と、研究・事業・投資の経験を生かし、研究シーズの事業化を支える1人です。
研究成果を自ら事業化する立場から登壇したのは、次の2人です。博士課程で取り組んだ農薬研究の実用化を目指し、2018年に株式会社アグロデザイン・スタジオを創業した西ヶ谷有輝さん。東京大学准教授としてゼオライトを研究する一方、その技術をDAC(大気中CO2直接回収:Direct Air Capture)へ応用するPlanet Savers株式会社で、取締役CSO(Chief Science Officer)を務める伊與木健太さん。
これに対し、研究シーズ(事業化の可能性を持つ研究成果・技術)を事業へつなぐ支援者として登壇したのが、金子佳市さんです。パナソニックで研究開発と経営企画を経験した後、ベンチャーキャピタルへ転身し、自らの起業も経験しました。現在はRelic執行役員としてディープテック領域を統括するとともに、柏の葉共創機構で研究シーズの事業化に伴走しています。
大学に残るのか、企業へ進むのか、起業するのか。3人の経験から見えてきたのは、進路の選び方だけではありません。専門性をどう育て、社会の課題とどう接続し、将来の選択肢をどう増やすか。本記事では、学生・若手研究者がキャリアを考えるうえで持ち帰りたい視点をひもときます。
本記事で読み解く3つの視点
学生時代に将来の肩書きを決め切る必要はない
研究と事業では、価値を確かめる「問い」が異なる
創業者以外にも、研究を社会へ届ける役割がある
学生時代に、将来の肩書きを決め切る必要はない
最初に問われたのは、3人が学生時代にどのような進路を思い描いていたかです。
光村さん「今は、スタートアップや起業という選択肢がだいぶ身近になってきていると感じています。皆さんの学生時代はどうだったのでしょうか」
現在の肩書きから逆算したような、完成されたキャリアプランを持っていた人はいませんでした。

伊與木 健太 氏|東京大学大学院新領域創成科学研究科 准教授/Planet Savers株式会社 取締役/Chief Science Officer(CSO)
2014年、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻で博士(工学)を取得。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)で日本学術振興会海外特別研究員を務めた後、東京大学の特任助教、助教、講師を経て現職。科学技術振興機構(JST)さきがけ研究員を兼任。多孔質材料「ゼオライト」の合成と応用を一貫して研究し、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーへの展開を進める。2023年、自らのゼオライト技術を大気中CO2直接回収(DAC)に応用する日本初のDACスタートアップ、Planet Savers株式会社を共同創業し、CSOに就任。大学で研究を続けながら、スタートアップでも技術の社会実装に取り組んでいる。
伊與木さん「学生時代は、深く考えていなかったです。小学生の頃から科学者に憧れていましたが、当時はイメージが漠然としていて。化学が好きになったのは高校になってからです。
研究室も、ゼオライト研究室の雰囲気が良さそうという理由で選んだくらいで、そんなに深く考えずに、ピンときたら選んで進んできた感じです。
大学に残らなきゃとも、企業に行かなきゃとも思っていなかった。学生の頃にリーマンショックがあり、自分も、周囲も、起業という選択肢は特に意識していませんでした」

西ヶ谷 有輝 氏|株式会社アグロデザイン・スタジオ 代表取締役社長/博士(生命科学)
1981年、静岡県生まれ。2016年、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程を修了。専門は構造生物学と創薬科学。博士課程で着手した農薬(硝化抑制剤)の研究成果の実用化を目指し、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)を経て、2018年3月に株式会社アグロデザイン・スタジオを創業(本社:千葉県柏市、東京大学柏IIキャンパス内)。2020年、国内の農薬スタートアップとして初めて、ベンチャーキャピタル(VC)から約1億円を調達。大学発ベンチャー表彰2020 アーリーエッジ賞、日本財団ソーシャルイノベーションアワード優秀賞を受賞。「99.8%の農地で使われる農薬を、より安全なものに」をビジョンに掲げ、タンパク質構造解析を活用した分子標的農薬の研究開発を進めている。
西ヶ谷さん「中学生の頃、Windows 95の登場とともにITの盛り上がりを目の当たりにして、起業への憧れもありました。けれどバイオブームに乗って生物系の研究室に入ると、博士課程でなかなか論文が出せない。オーバードクターで3年を過ごし、農研機構へ移って再び博士課程に入り直して、さらに4年半を要しました。博士号取得まで、合計10年9か月かかり、精神的にどん底でしたね。
これは状況を変えなきゃまずいと、それまで苦手だった『役に立つことをやる』方向に舵を切ってみたら、意外と楽しかった。それが今の会社につながっています」

金子 佳市 氏|株式会社Relic 執行役員/ディープテックイノベーションセンター長
国立大学法人東京農工大学 理事付/大阪工業大学 客員准教授/立教大学ビジネスデザイン研究所 特任研究員
大阪工業大学大学院とグロービス経営大学院大学を修了。現在は、立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科博士後期課程に在籍。
大手電機メーカーでパワーエレクトロニクス分野の研究開発と経営企画に従事した後、独立系ベンチャーキャピタル、スタートアップ、ブティックファームの創業・経営を経験。現在はRelicでディープテック領域を統括し、研究成果の事業化と技術経営を支援する。これまでに300件以上の技術経営支援に携わる。著書に『深技興国 ディープテックによる未来産業論』(Relic Publishing、2025年)。
金子さん「私は、学部卒業後、3度にわたって大学院で学んできました。修士(工学)と経営学修士(専門職)を取得し、現在も博士後期課程に在籍しています。最初に大学院で学んだときは、とにかく研究し、その成果を学術論文にまとめることを繰り返していました。ある程度、手を動かさないと見えてこない世界があり、研究に没頭した学生生活でした。
技術を突き詰めさえすれば、世の中の人ともよいコミュニケーションが取れると信じていました。台湾・中国への研究留学を経て、ほとんど迷うことなく、指導教官の出身企業であるパナソニックに入社しました。面接では『この事業部でなければ専門性を生かせない』と何度も伝え、希望どおりの配属を実現しました」
3人に共通していたのは、学生時代に現在の役割を決めていたのではなく、まず専門性を積み上げ、その後の経験や出会いに応じて進路を組み替えてきたことです。キャリア設計を、一度決めた道を守ることではなく、学びながら仮説を更新するプロセスとして捉える視点が見えてきます。
伊與木さんの転機——「誰が、いくらで買うのか」を問う

最初に転機を語ったのは、大学で研究を続けながら起業した伊與木さんです。出発点は、起業への強い志向ではなく、研究成果を社会で使われるものにしたいという思いでした。
伊與木さん「起業する少し前から、自分の研究を社会で使われるものにしたいという想いがありました。ただ、自分が起業するという意識はあまりなかったんです。
きっかけになったのは、アメリカでポスドクをやっていた時に一緒の研究室だった学生が起業して成功していたという話を後から知ったことです。『一緒に研究していたのに』という悔しさが頭の片隅にありました。
ちょうどその頃、連続起業家の方からメールが届いたんです。『環境系で起業したいが、大学の先生を片っ端から当たっている』という内容でした。会って話を聞いたら面白くて、じゃあやりますか、という流れになりました」
連続起業家との出会いによって変わったのは、キャリアだけでなく、研究を見る視点でした。伊與木さんは初めて、「何をつくれば、誰が、いくらで買うのか」を具体的に考えます。学術的に意義があることと、顧客が対価を払うことは、別の問いだと気づいたといいます。
伊與木さん「起業に踏み込めたのは、技術側の自分と、経営を担える人間が揃ったからです。そういう出会いは、そんなにあるものじゃないと思っています」
光村さん「全然知らない世界に飛び込むのは怖くなかったですか?やらないという選択肢はなかったのでしょうか」
伊與木さん「それはありましたね。ただ、DACについては経済産業省の有識者会議などを通じて、アメリカでどんどんスタートアップが出てきている状況は把握していて、日本にはまだないという危機感があった。カーボンニュートラルの流れも加速していて、これをやらなきゃ誰かがやる、やらないとまずい、という気持ちの方が強かったです」
Planet Saversは現在、三井不動産と連携し、柏の葉の商業施設屋上でCO2回収の実証実験を進めています。創業直後は実証の場を確保することにも苦労したといい、伊與木さんは「創業間もない頃、いろんなところで断られ続けた中で、三井不動産さんが場所を提供してくれた。大変助かっています」と振り返りました。
学生にとって重要なのは、起業の決断そのものより、研究に向ける問いが変わった点です。論文では新規性や妥当性が問われますが、事業では、誰のどの課題を解き、どの条件なら導入されるのかが問われます。会社をつくる前でも、共同研究先や企業研究者に用途や導入条件を尋ねることはできます。社会実装の準備は、研究室にいる段階から始められます。
西ヶ谷さんの転機——キャリアの制約を、事業の起点に変える

西ヶ谷さんは、研究テーマに未開拓の事業機会を見いだす一方、自身の年齢や専門領域をめぐる採用市場の現実にも直面していました。誰かに誘われたのではなく、研究とキャリアの双方から起業を選び取ったケースです。
西ヶ谷さん「医薬品の開発では当たり前だったアプローチを農薬に応用するという発想で始めたんですが、なぜか農薬分野では誰もやっていなかったんです。『なんでだろう』と思ったのが最初のきっかけでした」
起業を後押ししたのは、研究上の着想だけではありません。博士号取得までに長い時間を要した経験が、既存の採用市場に依存しない道を考える契機にもなりました。
西ヶ谷さん「私の場合はもう、これ(起業)以外にまともに生きていく道がなかった、というのも正直なところです。35歳で博士号を取った人材を、企業はなかなか採りません。自分の専門である農薬分野にしぼるとなおさらです。それなら自分でやるしかなかったのです」
事業経験がなかった西ヶ谷さんは、東京大学の起業家養成プログラムやアクセラレーター(事業構想を短期間で磨く支援プログラム)に参加し、起業・ベンチャー関連の書籍で不足する知識を補いました。
西ヶ谷さん「起業・ベンチャー関連の本を100冊読めば、大体わかります。1〜2日で読める本を100冊。それくらい読めば大体わかると思います」
2018年3月の創業から2年後、アグロデザイン・スタジオは、国内の農薬スタートアップとして初めて、ベンチャーキャピタルから約1億円を調達しました。「99.8%の農地で使われる農薬を、より安全なものに」というビジョンのもと、研究の独自性だけでなく、解くべき課題と目指す社会像を言葉にし、事業として育てる基盤を築いていきました。
西ヶ谷さんの歩みは、キャリア上の制約が、そのまま不利になるとは限らないことを示しています。長く研究を続けた経験や専門領域の狭さは、一般的な採用市場では選択肢を狭める一方、他の人には見えにくい課題を深く理解する独自性にもなります。専門性を「何を研究してきたか」だけでなく、「誰にどのような価値を届けられるか」で捉え直すことが、次の選択肢につながります。
金子さんの転機——研究と事業の間に立つ「翻訳者」というキャリア

西ヶ谷さんと伊與木さんが、自らの研究成果を事業化した当事者であるのに対し、金子さんは、研究者に伴走し、技術を事業へ移すプロセスを設計する立場です。その原点は、パナソニックで研究開発と経営企画の双方を経験したことにあります。希望して研究開発部門に配属されたものの、技術を磨くだけでは商品や事業につながらない現実に直面しました。経営企画へ異動すると、今度は研究で培った専門性をそのまま生かすことが難しく、両者をつなぐ役割を模索するようになりました。
その後、ベンチャーキャピタルへ転職し、起業家を支える側へとキャリアを広げました。投資前に技術や事業を精査するデューデリジェンスに携わるなかで、研究で培った知識が、技術評価だけでなく投資判断にも生きることに気づいたといいます。
研究成果を事業化する際には、技術の優位性だけでなく、顧客、知的財産、制度、開発期間、資金調達を一体で考える必要があります。選択肢が複雑になるなか、金子さんが重視するのが、研究者と事業側の間に立つ「翻訳」の役割です。
その役割は重要である一方、研究と事業の双方を理解する人材は、まだ多くありません。
金子さん「ベンチャーキャピタルが大学にアプローチしても関係者が増えすぎて論点が分散するし、大手企業も単年PLの評価指標の中では10年先を見越した投資はしづらい構造があります。研究もビジネスも両方が見えて、それぞれに対して正しく翻訳して伝えられる人が重要なんですが、絶対数が少ないです」
金子さんのいう「翻訳」とは、研究の価値と不確実性、事業化までの時間、必要な資金とその調達方法を整理し、研究者・企業・投資家が同じ前提で意思決定できるようにすることです。
金子さん「私が今やっている仕事は、研究者とともに、事業をどうすれば立ち上がるかを一緒につくっていくことです。ファイナンスの手法はどんどん複雑化しており、投資のスタイルも変わってきていて、研究者出身の起業家がパッと理解できるものではありません。
研究者の方には、研究のどの段階で、どのようなファイナンスが適しているのか、仮説を交えてお話ししています。『わかりやすい、世界が少し開けた感じがする』という反応をいただいています」
学生が見落としやすいのは、研究を社会へ届ける方法は、自ら創業することだけではないという点です。技術評価、事業開発、投資、知的財産、政策・制度設計など、研究への理解を生かせる役割は周辺に広がっています。研究を生み出す側、事業として届ける側、その間をつなぐ側。役割の違いを知ること自体が、キャリアの自由度を高めます。
研究と事業を分けるのは、能力ではなく「問い」
3人の経験から見えてきたのは、研究とビジネスを対立させる必要はないということです。伊與木さんは、両者に共通する思考を次のように語ります。
伊與木さん「研究でも、応用研究でも、社会実装でも、求められるのは『課題を見つけて設定して、それに向かってどうやるか』という点では共通しています。手段が違うだけで、課題をビジネスで解くのか、研究で解くのか、という違いだと思っています」
ゼオライト研究をDACの技術開発につなげた経験が、この考えの背景にあります。一方で、研究成果がそのまま事業になるわけではありません。同じ課題に向き合っていても、研究者と企業では重視する問いが異なるからです。

そこで光村さんは、共同研究が事業化につながりにくい理由を尋ねました。「大学と企業の共同研究における断絶についてもお伺いしたいです。共同研究からビジネスが生まれにくいことは、事業開発に携わる人たちにとっても大きな課題です。どうすれば乗り越えられるのでしょうか」
伊與木さん「『研究がここまで来ました、これができたら次はこうなるはず』という研究者側の語り口と、ビジネスサイドの問いが噛み合わないことが多いです。その溝を埋める一歩として、研究者は共同研究している企業に『こういうのがあったら、うれしいですか?』と聞いてみてください。意外とそこから話が動くことがあるんです」
伊與木さんが示したのは、研究成果を説明する前に、相手が解こうとしている課題を尋ねる姿勢です。企業が必要とする性能、導入条件、コスト、時間軸を確かめることで、研究テーマの優先順位も見直せます。共同研究を事業化へ近づけるのは、完成度の高い説明資料だけではなく、相手の問いを理解する対話です。
これは、起業を考えていない学生にも有効です。研究室の外にいる人へ自分の研究を説明し、どこに価値を感じるか、何が足りないかを聞く。そうした対話は、研究の意義を言語化する訓練になり、就職、共同研究、助成金申請のいずれにも生きます。
学生のうちに始められる、三つの準備

セッションの最後に示された助言は、起業のためだけの準備ではありません。どの進路を選んでも生きる、研究者としての基礎体力に集約されました。
1.研究成果を、外部評価に耐える形へ——実験・論文・助成金
西ヶ谷さん「とにかく実験してください。自由に手を動かせる環境は、学生の特権です。そして論文を出してください。就職でも起業でも、論文の有無は大きな差になります。最後に、助成金を申請してください。自分のやりたいことを文章化して資金を取る力は、起業する際にも絶対に必要になる。プロとアマチュアの差はここだと思っています。今日帰ったら、どんな助成金があるか調べて、書き始めてみてください」
2.自分の専門性と、解きたい課題を言葉にする
伊與木さん「まず『自分は何者か』と言えるようになってほしいです。何でもいいので、他の人にない自分の強みはこれだ、と言えるようになることが大切です。そのうえで、10年後・20年後に何をしたいかを考えて、そこに向かうルートを考えてみてほしい。起業も、大学に残ることも、就職も、全部手段です。途中で変わってもいい時代ですし、最初に選んだものが一生の正解ではありませんから」
3.専門外の語彙を持ち、視野を広げる
金子さん「今やっていることと、少し違うことを見てみてください。研究をやっている方なら、ビジネスやファイナンスの本を読んでみる。1か月に1冊、専門外の本を読むだけでも、1年で12冊、2年で24冊と積み上がっていきます。そこから異分野融合の研究へ発展するかもしれないし、事業づくりや投資という道へ進むかもしれません。学生時代の自分に会えるとしたら、それを伝えたいですね」
キャリアの正解を急ぐより、選択肢を増やす
研究者のキャリアに、起業という選択肢はあります。ただし、それは研究を離れることでも、学生のうちに決断すべきことでもありません。大学に残る、企業で研究する、自ら事業を起こす、研究と事業をつなぐ。いずれも、自分が解きたい課題に向き合うための方法です。
3人のキャリアは、最初から設計されていたわけではありません。研究の停滞、組織で感じた違和感、偶然の出会いを、次の行動につなげた結果として現在があります。共通していたのは、専門性を手放さずに、専門の外にある問いと人へ接続し続けたことでした。
西ヶ谷さんと伊與木さんは研究成果を自ら事業化する立場から、金子さんはその挑戦を支える立場から、研究者のキャリアを語りました。三者の経験が示すのは、肩書きを先に決めるのではなく、「どの課題に、どの強みで向き合うのか」を基準に進路を考えることの重要性です。
学生・若手研究者に今必要なのは、起業する覚悟ではなく、将来の選択肢を比較できるだけの経験と言葉を持つことです。研究を深める。助成金に応募する。企業や異分野の人に話を聞く。専門外の本を読む。小さな行動の蓄積が、研究室の外にもキャリアを広げていきます。
研究を次の一歩へ進めたい学生・研究者へ——「ZERO1000 Ventures for Kashiwanoha」

研究成果に事業化の可能性を感じていても、顧客の探し方、用途の絞り方、実証の進め方、資金調達の考え方は、研究だけでは見えにくいものです。三井不動産とRelicは、学生・研究者のシーズやアイデアを実装・事業化につなげるスタートアップスタジオ「ZERO1000 Ventures for Kashiwanoha」を運営しています。
https://zero1000.relic.co.jp/dt-kashiwanoha
両社の共同チーム「柏の葉共創機構」が、ビジネスプランの策定、資本政策(資金調達や持株比率の設計)の検討、街を活用した実証機会の提供などを通じて、研究シーズの事業化に伴走します。
研究成果の用途や顧客仮説を整理したい段階で、研究室の外に相談相手を持つことには大きな意味があります。柏の葉には、大学・研究機関、企業、スタートアップ、支援者が集まり、研究を社会で試すための接点があります。
自分の研究は、誰のどの課題に役立つのか。まだ答えが定まっていない学生・研究者にとっても、外部との対話を始めることが、事業化に向けた最初の検証になります。
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